カスハラ対策義務化とは?法改正の内容と企業が行う対策を解説
作成日:2026年10月26日
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化に伴い、企業は相談体制の整備や対応方針の策定など、必要な体制を整える必要があります。
本記事では、法改正に備えて企業が実施すべき準備事項や具体的な対応フローを分かりやすく解説します。カスハラが発生した際の対応フローや、義務化に向けて準備しておきたいポイントも紹介します。
カスハラ対策が義務化された背景
カスハラ対策義務化に関する法改正
改正労働施策総合推進法の内容
カスハラ対策義務化の対象企業と施行日
カスタマーハラスメントの定義と判断基準
カスハラに該当する要件
カスハラに該当する言動の具体例
正当なクレームとカスハラの違い
カスハラのグレーゾーンを判断するポイント
カスハラ対策義務化で企業に求められる措置
カスハラ防止の基本方針を策定する
対応体制を整備する
カスハラ発生時の対応方法を整備する
カスハラを抑止するための施策を実施する
従業員への周知・教育・研修を実施する
カスハラ発生時の対応フロー
従業員の安全を確保して事実を確認する
カスハラに該当するか判断する
上司や管理部門へ報告・エスカレーションする
対応内容を記録して証拠を保存する
被害を受けた従業員をフォローする
再発防止策を実施する
カスハラ対策義務化に向けて企業が準備すること
自社のカスハラ発生状況を把握する
基本方針・規程・マニュアルを見直す
相談・報告・対応体制を確認する
従業員への教育・研修を実施する
まとめ
カスハラ対策が義務化された背景
近年、顧客や取引先からの悪質なクレームや過剰な要求といったカスタマーハラスメント(カスハラ)が深刻な社会問題となっています。従業員が精神的ストレスから離職に追い込まれたり、通常業務が阻害されたりする被害が相次いで発生しています。
従来のハラスメント防止措置だけでは十分ではなく、労働者の心身の健康と安全な就業環境を守るための法的な枠組みが強く求められるようになりました。企業には組織的な対応を講じることが求められています。
カスハラ対策義務化に関する法改正
労働施策総合推進法の改正に伴い、企業にはカスタマーハラスメント防止対策が新たに義務付けられます。過剰な要求や悪質なクレームから従業員を守るため、雇用管理上の措置が必要となります。
改正労働施策総合推進法の内容
労働施策総合推進法の改正により、企業にはカスタマーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置が新たに義務付けられます。顧客等からの悪質な言動から労働者を守るため、事業主は相談体制の整備や対応マニュアルの策定といった対策を組織的に講じなければなりません。
カスハラ対策義務化の対象企業と施行日
今回の法改正によるカスタマーハラスメント対策の義務化は、企業規模を問わず全ての事業主が対象となります。大企業だけでなく中小企業においても、従業員を悪質なクレームから守るための体制整備が必要です。
施行日については、2026年(令和8年)10月1日より、企業規模を問わず全ての事業主に一律で適用されます。企業は早期に社内規程の見直しや相談体制の整備といった準備を進めることが重要です。
参考:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント|厚生労働省
参考:令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について|厚生労働省
カスタマーハラスメントの定義と判断基準
カスタマーハラスメントは顧客や取引先などによる言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えた要求や言動によって、労働者の就業環境が害されるものを指します 。正当な苦情との切り分けが重要となります。
参考:カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介|政府広報オンライン
カスハラに該当する要件
顧客や取引先からの要求内容や態様が社会通念上不相当であり、それによって労働者の就業環境が害される場合にカスタマーハラスメントと判断されます。不当な要求や手段の悪質性がおもな判断要素となります。具体的には、過剰な金銭要求や継続的な土下座の強要といった威圧的な言動が該当します。
労働者の人権を守りつつ、業務の正常な運営を維持するために正確な要件の把握が必要です。
カスハラに該当する言動の具体例
カスハラの具体例としては、従業員に対する暴言や威圧的な言動、土下座の強要といった身体的・精神的な攻撃があげられます。必要以上の長時間の拘束や、金銭的な不当要求、従業員の写真や動画を無断で撮影・投稿し、誹謗中傷や不当な圧力をかける行為も該当します。業務の合理的な範囲を超える著しい迷惑行為は、企業として適切な対処を行う対象となります。
正当なクレームとカスハラの違い
正当なクレームとカスハラを分ける要素は、要求内容の妥当性と手段の適切さです。商品の初期不良やサービスの不備に対して、事実に基づき改善や補償を求める行為は正当な権利行使にあたります。
一方、商品やサービスに重大な欠陥がないにもかかわらず金銭を要求したり、過度な謝罪を求めたりする行為はカスハラにあたります。
参考:業種別カスタマーハラスメント対策の取組支援|あかるい職場応援団
カスハラのグレーゾーンを判断するポイント
要求内容に一定の妥当性が認められるものの、言い方や態度が過剰となる事例では判断が困難になります。グレーゾーンを判断する際は、顧客の要求が社会的通念に照らして相当と言えるか精査することが重要です。不当な手段や態様が継続する場合は、組織として明確な基準を設けて対処方針を決定します。
カスハラ対策義務化で企業に求められる措置
企業はカスタマーハラスメントを防止するための適切な雇用管理上の措置を講じなければなりません。基本方針の策定や相談体制の整備など、具体的な対策を進める必要があります。
参考:令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について|厚生労働省
カスハラ防止の基本方針を策定する
企業はカスタマーハラスメントを許容しない姿勢を明確にするため、基本方針を策定して社内外へ表明します。経営トップによるメッセージの発信や、対象となる行為の定義、毅然とした対応を行う基本方針を明文化します。方針を文書化して社内周知やWebサイトへの掲載を行うことで、従業員の保護と取引先への抑止効果を高めます。
対応体制を整備する
企業はカスタマーハラスメントに関する相談体制を整備し、従業員へ周知します。窓口の担当者は被害を受けた従業員の精神的ケアに配慮しつつ、迅速かつ適切に状況を把握する役割を担います。人事部門や法務部門、外部の専門家と連携した体制を構築し、相談者が不利な扱いを受けない環境を整えます。
カスハラ発生時の対応方法を整備する
顧客対応時のトラブルを迅速に解決するため、具体的な対応手順や初期対応の判断基準を記したマニュアルを整備します。威圧的な態度や長時間の拘束に対しては、毅然とした態度で複数人対応を行う体制や、対応を打ち切る基準を事前に設定します。明確なルールを社内で定めておくことで、現場の従業員が迷わず適切に行動できるようサポートします。
カスハラを抑止するための施策を実施する
カスタマーハラスメントを未然に防ぐため、企業はポスターの掲示やWebサイトでの基本方針の公開といった抑止策を講じます。店舗や電話窓口に警告文を掲出するほか、通話内容の録音や防犯カメラの設置をあらかじめ告知することも有効です。
組織としての対応姿勢を明確に示すことで悪質な言動を牽制し、現場で働く従業員が安心して業務に専念できる環境を整えます。
従業員への周知・教育・研修を実施する
基本方針や対応マニュアルを整備した後は、全従業員に対する周知と教育を実施します。定期的な研修や勉強会を通じて、カスタマーハラスメントの定義や具体的な対応手順を組織全体へ浸透させます。ロールプレイング形式の実戦的な訓練を取り入れることで、現場での適切な判断力と対応力を高め、ハラスメント被害の拡大を防ぎます。
カスハラ発生時の対応フロー
カスタマーハラスメントが発生した際は、組織的に段階を踏んで対処を進める必要があります。
従業員の安全を確保して事実を確認する
被害が発生した際は直ちに従業員の安全を確保したうえで、客観的な事実確認を行います。相手の言動や発生日時、対応の経緯、具体的な被害内容について関係者から聞き取りを行い正確に記録します。
カスハラに該当するか判断する
収集した客観的な事実に基づき、顧客の要求内容の妥当性と手段や態様の適切さを総合的に検証して判定を行います。社会的通念に照らして不当な手段や過剰な要求、継続的な威圧行為が認められる場合は、カスタマーハラスメントと判断します。
上司や管理部門へ報告・エスカレーションする
現場担当者による単独での対応を避け、不当な要求や悪質な言動が認められた場合は速やかに上司や専門部署へ報告します。事態が悪化する前に組織的なエスカレーションを行い、責任者の同席や複数人での対応体制へと迅速に切り替えます。
対応内容を記録して証拠を保存する
顧客とのやり取りや事実経過は、迅速かつ正確に記録して証拠として保存します。会話の録音データやメール履歴、防犯カメラの映像などを整理して保管することが重要です。客観的な証拠を確保しておくことで、その後の法的な対応や組織的な判断をスムーズに進める基盤を整えます。
被害を受けた従業員をフォローする
カスタマーハラスメントによる被害を受けた従業員に対しては、迅速かつ適切なメンタルヘルスケアを実施します。状況に応じて特別休暇の取得を認めたり、専門のカウンセラーや社外窓口と連携した支援を行ったりします。孤立を防ぎ安心して勤務を継続できるよう、組織全体で手厚いフォロー体制を整えます。
再発防止策を実施する
事案の対応が完了した後は、発生したカスタマーハラスメントの原因を分析して再発防止策を策定します。対応マニュアルの改訂や現場における初期対応手順の見直しを実施します。得られた知見や具体的な事例を社内で共有し、組組織全体の対応体制や再発防止力の強化を図ります。
カスハラ対策義務化に向けて企業が準備すること
カスタマーハラスメント対策の義務化に対応するため、企業は組織体制の整備を進める必要があります。法改正を見据えて適切な防止措置を段階的に導入することが求められます。
自社のカスハラ発生状況を把握する
対策を進めるにあたり、まずは自社における被害の実態を把握することが重要です。現場の従業員が直面しているトラブルを可視化するため、定期的なアンケート調査を実施します。過去のクレーム履歴を分析して具体的な傾向を整理することで、自社の課題に適した防止策を策定できます。
基本方針・規程・マニュアルを見直す
実態把握の後は、既存の社内規程や対応マニュアルの改訂を行います。就業規則へカスタマーハラスメントの禁止条項や処分規程を追加し、組織の姿勢を明確にします。また、現場向けの対応マニュアルを見直し、具体的な判断基準や段階的な対処手順を最新の状態へ更新します。
相談・報告・対応体制を確認する
被害への対応を迅速に進めるため、社内の相談体制や報告ルートを確認します。トラブルが発生した際に現場の担当者が即座に上司や専門部署へ連絡できるよう、具体的な連絡網や判断基準を明確にしておくことが重要です。部署間での情報共有を円滑にし、組織全体で対応する態勢を構築することで、過度な負担を軽減します。
従業員への教育・研修を実施する
カスタマーハラスメントを未然に防ぎ現場の対応力を高めるためには、従業員への継続的な教育が重要です。研修や勉強会を通じて、カスハラに該当する言動の例や、発生時の対応手順を従業員に共有しておくことが大切です。
実践的なロールプレイング訓練を取り入れることで、従業員自身が判断に迷わず迅速に行動できる態勢を整えます。組織全体で適切な知識と対応方法を共有することが、被害の拡大防止につながります。
まとめ
カスタマーハラスメント対策の義務化に対応するため、企業には組織的な体制の構築と迅速な準備が求められます。自社における過去のトラブルや被害の実態を正確に把握したうえで、各種規程や対応マニュアルの改訂を早期に進めることが重要です。
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