企業内線におけるPHSやスマホ内線の特徴と今後の動向を徹底解説! 注目の新技術sXGPについても企業音声構築のプロ目線でご紹介
作成日:2024年8月19日
はじめに
近年、企業電話システムは、コロナ渦を境にテレワークやハイブリットワーク、フレックスタイム等の働き方改革が大きく推進され、各企業の働き方に合わせて見直し検討されているお客様は多いのではないでしょうか。
現在、企業電話システムは大別して、従来型の拠点に設置するオンプレPBX・クラウドサービスのクラウドPBX(通信キャリアのFMCサービス含む)・Teams・Zoom等のコラボレーションツールがありますが、今回はオフィス(フリーアドレス環境等)やテレワーク等で導入が進んでいます。
モバイル運用に利用する各技術(システム/サービス)について、概要・特徴・今後の動向について考察します。
構内PHSシステム
構内PHSシステムの概要・特徴
構内PHSシステムは、長年、拠点に設置するオンプレPBXのモバイルシステムとして、最も実績が多く、通話品質/安定性に優れた音声用途主体のシステムとして評価高く利用されてきたシステムです。(電波の周波数帯は電波干渉の少ない1.9GHz帯を使用)
PHSをPBXの内線として登録し、通話するエリアに自営のPHSアンテナを置局設計、設置してオンプレPBXと接続します。
PHS / 移動を伴う業態 / 業務のお客様 / オフィス / 工場 / 病院(ナースコールシステムとPHS内線接続) / 公共機関(鉄道など)等様々な環境で導入されてきました。
構内PHSの今後の動向
本システムは、次以降ご紹介の「通信キャリアのFMCサービス」やスマートフォンが普及し、PBXの内線として活用されるまでは、モバイルと言えば「構内PHSシステム」と言える程導入された技術です。導入に関しては、オンプレPBX更改時、既存アンテナやPHSの転用でコスト削減を図り、継続利用される導入が多く見受けられました。
しかしながら現在は、一世風靡した構内PHSシステムも、以下背景・理由に依り導入が減少しています。
(1) スマートフォンの普及、業務活用
(2) PHS製造メーカーのPHS機種減少状況
(3)公衆PHSのサービス終了(音声利用は2021年1月末終了)
(4)NTT東西 INSネットサービス終了予定(2028年12月31日)
※構内PHSシステムは、INSネット回線(INS64・INS1500)で同期を取り、 他ユーザーのPHSシステムとの電波干渉を防ぐ対策を実施(音声品質対策)以上に依り、構内PHSシステムは、今後縮小、先々販売停止の可能性も考えられますので、システム更改時は、今回ご紹介する他モバイル技術の検討も含める検討が必要になります。
通信キャリアのFMCサービス
FMCサービスの概要・特徴
通信キャリア(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク)の携帯電話(法人契約スマートフォン・ガラケー)に内線番号を付与し、携帯電話(FMC内線)間の内線電話運用や既存のオンプレPBX等とFMCサービスを接続し、携帯電話(FMC内線)とPBX内線間で内線電話運用が可能なサービスです。FMC同士の内線電話に関わる通話料は定額で掛け放題の料金体系です。
2009年からサービスが開始され、社給携帯電話を内線電話機として活用(電話端末コスト削減)、携帯電波が届く社内/外出先でも電話運用可能なサービスとして、こちらもPHS同様に長期に渡りサービス展開されている導入実績が多いサービスです。
サービスの特徴については、FMCサービスの通話は、携帯電話通話と同じ通話品質で、電波状況が良ければ比較的品質も良く安定しています。
ただし災害時等は、携帯電話の一斉利用で携帯網が混雑し、通信キャリアの通話規制に依りFMCサービスが利用できない等、影響を及ぼす可能性があります。
FMCサービスの今後の動向
長期に渡りサービス展開してきましたFMCサービスは、携帯内線サービス色が強く、外出先での内線電話運用実現の為に、オフィス等のPBXと接続する導入形態が多い状況でしたが、昨今はクラウドPBXやモバイル化(固定電話削減)の検討・普及が進み、携帯電話(FMC内線)以外に固定電話や外線も利用するクラウドPBXとしての色合いを強め、今後も検討/導入が進むでしょう。
スマートフォン内線アプリ(Wi-Fi接続&携帯電波接続)
スマートフォン内線アプリの概要・特徴
スマートフォンに内線用アプリケーションをインストールし、オンプレPBXやクラウドPBXの内線として利用します。
音声の通話方式は、VoIP通信(パケット通信)で、スマートフォンとPBXの接続は、社内無線LAN(Wi-Fi)経由で接続する方式と携帯電波、インターネット経由で接続する方式があります。
オンプレPBXに社内用モバイル内線として無線LAN(Wi-Fi)経由で接続する方式のスマートフォン内線アプリは、日本でのスマートフォン発売(2008年iPhone3GS発売)、を背景に、2011年頃から発売されました。
しかし、スマートフォンに接続する無線設備(無線アンテナ・無線コントローラーなど)は、音声品質 / 安定性を踏まえたメーカーによる評価 / 検証製品への限定 / 無線設備のコスト高 / 無線周波数帯2.4GHz/5GHzは電波干渉に依る音声通話への影響(途切れ、無音など)等、課題は多い状況で現在に至っていますが、2014年頃、携帯電波/インターネット経由で接続する方式のシステムが発売されました。
無線設備不要のシステムは、携帯電波エリアであれば社内/社外を問わず電話運用可能でVoIP通信(パケット通信)の為、通話料金はデータ通信料の中で利用でき通話コスト削減が期待できるシステムとして、注目される様になりました。
モバイル技術の対抗馬、通信キャリアのFMCサービスとの違いについては、様々な通信キャリアの携帯が利用可能、法人契約の社給携帯以外に社員のプライベート携帯も利用可能なデバイスフリーな点が特徴(利点)として挙げられます。
なお、VoIP通信(パケット通信)・インターネット経由での通信の為、携帯電話通話と比べ音声品質・安定性を懸念されるお客様も多くいらっしゃいます。導入検討時はトライアルサービスを実施・評価の上、導入を検討する事を推奨致します。
スマートフォン内線アプリの今後の動向
今後スマートフォン内線アプリ(携帯電波接続)は、5Gの普及により音声品質の向上が予想されます。5Gは、「超高速」「大容量」「低遅延」が売りの次世代移動通信規格です。従来の4Gは電話の発着信が集中するとつながりにくい欠点がありましたが、4Gと比べて5Gの通信速度は100倍、遅延は10分の1といわれています。5Gが普及することで、今後はFMCサービスと比較してコスト面で安価なスマートフォン内線アプリが主流になる日がくるかもしれません。
sXGP(shared Xtended Global Platform)
sXGPの概要・特徴
構内PHSシステムと同じ、電波干渉源少ない周波数帯1.9GHz(Band39)を使用、技術利用に免許不要、プライベートLTE、次世代PHSと呼ばれている技術で、2020年頃国内でビー・ビーバックボーン社に依りサービスが開始されました。
sXGPの主な構成は、LTEを管理するEPCと呼ばれるハードウェア / アクセスポイント / システムの同期機器 / sXGP端末で構成されます。
sXGP端末はsXGP(Band39)対応の技適取得端末が必要になり、スマートフォンではAQUOSシリーズ、arrowsシリーズ等、ガラケーはDINGOケータイ、2023年にはiPhoneシリーズと徐々に対応端末が増えている状況です。
なおsXGPは音声だけでなくライト(上り4Mbps、下り14Mbps)なデータ通信も可能です。
sXGPの導入は、主に構内PHSシステムの更改・工場等ではモバイル電話+IoT利用・病院ではモバイル電話+ナースコール・電子カルテ連携等、業務システムのスマートフォン連携まで活用された導入が、サービス開始から進んでいます。
携帯電波を使用してないので災害時の通信規制に影響を受けない、1.9GHz帯利用に依りWi-Fi(2.4GHz/5GHz)より電波干渉の影響が少な い(音声品質)、電波がよく届く(アンテナのコスト削減)、モビリティに優れている(ハンドオーバーに依る通話の途切れに強い)、音声以外にライトなデータ通信の利用等が挙げられます。
sXGPの今後の動向
sXGPはご紹介の中では新しい技術ですが、現在、構内PHSシステム利用のお客様を主体として、特に工場 / 医療機関(病院) / 公共インフラ(鉄道など)など、ミッションクリティカル、高セキュリティを求める業種/業態で検討候補に挙がるシステムです。
現時点では普及している数が少ないためコストが高額になっておりますが、普及と共にコストが低減されればPHSの後継システムとしての採用が進む可能性があります。
最後に
今回はモバイル技術の側面から概要・特徴・動向等をお伝えしました。
今後も企業電話システムのモバイル技術は、働き方改革、業務改善等に寄与するシステム、技術として重要なファクターに変わりないでしょう。
昨今の企業電話システムは、働き方改革、どこでも業務が可能なクラウドPBXやTeams等のコラボレーションツールの利用が促進されていますが、企業電話は業種/業態に依るコミュニケーション、電話運用等に関して特徴はあり、課題も様々と思います。
今回ご紹介したモバイル技術を参考に自社の課題解決、今後の企業電話システムの検討にお役立ち頂ければ幸いです。
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