ブログ

BLOG 都築電気ブログ

動態管理システムが再注目される2つの理由

作成日:2026年1月30日

トラックの運行状況を測定・記録する動態管理システムが、再注目されています。


動態管理システムそのものは、運送事業者には馴染み深いものです。

というのも、最近のデジタルタコグラフ(デジタコ)や業務用ドライブレコーダー(ドラレコ)はGPS装置を備えた動態管理機能が付帯しているケースが多いからです。


しかしながら「動態管理機能があること」と「これを使いこなしていること」は別です。ほとんどの事業者の場合、動態管理機能で記録された車両走行ログを確認するのは、事故やクレーム、あるいはデジタコ・ドラレコから危険運転の警報が発報されたような、何かのアクシデントが発生したケースに限られるのではないでしょうか。


しかし、ここに来て動態管理システムが再注目されています。その理由は主として以下のとおりです。


1. 物流業務全般に対する改善機運が高まっていること

2. 使いやすく進化した動態管理システムが登場していること


これらについて解説しましょう。


動態管理システムの活用が進まなかった理由


では、なぜ動態管理機能を使いこなしていない運送事業者が多かったのでしょうか?

端的に言えば、使いにくかったからだと、筆者は考えています。

 

筆者は運送会社に勤務していた頃、可能な限り毎日、各ドライバーの走行ログを確認するようにしていました。なぜなら、走行ログからは数字以上の気づきが得られるからです。

 

例えば、仕事が遅く、車両接触事故や商品破損といった事故も多いドライバーのログを確認した際のことです。データを見ると、Uターンや目的地に対して大回りしているケースが散見されました。彼の運転技術が足りていなかったことも事実ですが、それ以上に問題だったのは、出発前に段取りを組むことが苦手だったこと。その結果、焦りが生じ、事故を引き起こしていた可能性がありました。そこで、前日に翌日の運行計画を伝える際、ルートや軒先情報を一緒に確認するようにしたところ、目に見えて事故が減少しました。

 

またある時、急に延着が目立つようになったドライバーがいました。走行ログを確認すると、降りるべき高速ICを通り過ぎたり、曲がるべき交差点を直進したりといったミスが続いていました。これらは疲労による漫然運転の可能性が高いと判断し、本人に生活リズムの見直しの注意を促すと同時に、一時的に身体への負担が少ない配車を組むよう、配車担当者に進言したところ、延着問題は改善されました。

 

このように走行ログからは、さまざまな気づきを得ることができますが、実際にここまで行っている運行管理者は多くありません。

理由は、とても手間がかかるからです。

 

ドライバー1人ずつの走行ログをチェックすることがまず手間です。しかし、ただ漫然と走行ログを眺めるだけでは本質的な課題は見えてきません。Uターンのような明らかに危険を生じさせかねない走行はともかく、本来は運行指示書や運転日報、急ブレーキや急加速などの運転ログと照合しながら確認する必要があります。

しかし、旧来の動態管理システムは他の情報との紐付けがなされておらず、スタンドアローンな運用を強いられていたため、とても使い勝手が悪かったのです。

 

再注目の理由その一「物流業務全般に対する改善機運が高まっていること」


しかし、今や「手間がかかるから」という理由は通用しなくなっています。その直接的な要因は、法改正です。


2024年4月から、働き方改革関連法によってトラックドライバーの年間時間外労働時間に上限が課される、いわゆる「物流の2024年問題」が発生しました。さらに、貨物自動車運送事業法や物効法が次々と改正されています。


特に2026年からは、すべての荷主や元請事業者に対して、物流効率化を図る義務ないし努力義務が課されるようになります(※取り扱う荷量により異なります)。

また、下請法の改正により、荷主側は、これまで運送会社に押し付けてきた非効率な荷待ち・荷役に対しても、適正な対価を支払う義務が生じます。


なかでも現場が対応に苦慮しているのが、1回の運行における荷待ち・荷役時間の総計を2時間以内に収めなければならない「1運行2時間ルール」です。


運送会社側にとっても、運送事業許可に5年毎の更新制度が導入されることで、労働時間をはじめとするコンプライアンス遵守の重要性はかつてないほど高まっています。


================================================================================================================

※関連法令のポイント

物効法(2026年4月1日施行)

第42条 (荷主の努力義務)

第一種荷主は、貨物自動車運送事業者又は貨物利用運送事業者に貨物の運送を委託する場合には、当該貨物を運送する運転者の荷待ち時間等の短縮及び運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加を図るため、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。


貨物自動車運送事業輸送安全規則(2025年4月1日施行)

第9条(業務の記録)

貨物自動車運送事業者は、事業用自動車に係る運転者等の業務について、当該業務を行った運転者等ごとに次に掲げる事項を記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。

(中略)

八 集貨地点等で、当該貨物自動車運送事業者が、荷役作業又は附帯業務を実施した場合にあっては、次に掲げる事項

イ 集貨地点等

ロ 荷役作業等の開始及び終了の日時

ハ 荷役作業等の内容

=================================================================================================================


法令では、荷主は荷待ち・荷役時間の短縮を行うことが義務として定められました。

運送会社には、その時間等を記録することが義務として定められています。


この記録を行うためのツールとして、動態管理システムが注目されているわけです。


そもそも、(トラック運行に限らず)改善を行うためには、改善前の状態を把握することが不可欠です。

従来はデジタコがその役目を担ってきましたが、デジタコは車両信号から走行状態は正確に取得できるものの、休憩・待機・荷役の状態はドライバーの主観的な手入力に頼らざるを得ません。運行形態によっては正確な記録が難しく、記録を改善にまで繋げるには力不足となるケースが増えているのです。


再注目の理由その二「使いやすく進化した動態管理システムが登場していること」


実情を言えば、従来のデジタコ運用では、自動記録される走行時間の合間にある非走行時間を、ドライバーや運行管理者が休憩・待機・荷役として都合よく振り分けているケースもあります。しかし、今後はこうした記録方法は許されません。


例えば、1回の停車で複数箇所の積み卸しを行う現場(※複合商業施設や巨大オフィスビルなど)では、デジタコだけに頼った記録は難しいです。1件配送が終わるたびに、トラックに戻ってデジタコのボタンを押すのは現実的ではありませんから。


そこで注目されているのが、スマートフォンなどのアプリとして提供される動態管理システム(以下、動態管理スマホアプリ)です。


動態管理スマホアプリであれば、1停車複数積み卸しの記録も手元でスムーズに行えます。さらに、以下のような高度な拡張機能を備えたシステムも登場しています。


● カーナビゲーション機能を備えたもの


● 各種コードの読み取りができるハンディターミナルのような検品機能を備えたもの


● 納品場所の写真などを撮影・記録・報告できるもの


● 軒先情報などを共有できるもの


● 運行中の現在位置やステータス(「現在、◯◯物流センターで荷役中」など)を運送会社のみならず、発荷主・着荷主らにも共有できるもの


特筆すべきは、機能の付加と情報の双方向性です。


例えば軒先情報です。

ある運送会社では、軒先情報を印刷、ラミネートして、ドライバーに持たせていました。

しかし、軒先情報は変更・更新されます。そのたびに原紙を差し替えるのは手間なため、付箋紙で修正を加えていました。その結果、付箋が増えすぎて原紙が読めなかったり、持ち出す際に付箋紙がはがれ、紛失するといった問題が起きていました。

動態管理スマホアプリなら、例えば「構内でエンジンをかけっぱなしにして守衛に叱られた」といった即時性・重要度の高い情報も漏らさず共有することができます。


情報の双方向性もとても有用です。

例えば、荷主(特に着荷主)からの「いつ到着するのか?」といった着車時間問い合わせに対する対応は、とても手間がかかるものの、無下にはできません。

動態管理スマホアプリの中には、現在位置や運行状況をWeb公開できるもの、着車予定をメール通知できるものもあり、こういった問い合わせ対応に伴う事務所業務の負荷を大幅に削減することができます。


法改正によって、荷待ち・荷役時間を正確に把握することが求められる荷主や元請事業者は、実輸送を担う運送会社から待機・荷役等の時間記録を取得しなければならないケースが多くなるはずです。


しかし、基本的にはデジタコから情報を吸い上げて共有するのは簡単ではありません。なぜならば、デジタコは外部連携のハードルが高いからです。かといって、運送会社から運行報告を逐一受けるのは、荷主・元請事業者側としても、運送会社側としても、とても手間がかかります。


そのため外部連携に優れた動態管理スマホアプリを、荷主や元請側が運送会社に支給し、運行管理とデータ収集の手段として確保するケースが増えてきているのです。


物流改善が必須となる今後に求められること


デジタコ(※正確にはタコグラフ)は、輸送の安全確保と労働管理の適正化を目的に設置されるものとして、法令では位置づけられています。


タコグラフ設置が義務化されたのは、1962年のこと。当時は、片道100kmを超える長距離路線トラックおよびバスだけが対象でした。ちょうど、交通事故による死者数が日清戦争での日本側の戦死者数(2年間で約1万3,500人)を上回るほどの勢いで増えた交通戦争の真っ只中でした。


この後、タコグラフは段階的に対象が拡大し、2014年には総重量7t以上または最大積載量4t以上のトラックへの装着が義務化され、現在に至ります。


筆者は1996年までトラックドライバーでしたが、当時はまだ運送会社における法令遵守意識はとても低かったです。ある中堅運送会社は、「貨物を積んだ状態で160km/h巡航ができないトラックは、メーカーに返品する」と公言していました。筆者自身、「千葉から福岡まで13時間で運行すること」を会社から指示されたことがありました。千葉~福岡の距離は1,100kmを超えていますから、これは事実上会社からスピード違反で運行することを強要されたことになります。


かつてはコンプライアンス遵守意識が著しく低かった運送業界においては、タコグラフは安全を守る防波堤として期待されていたのです。


対して、動態管理システムへの注目は、輸送改善──厳密には「サプライチェーンの最適化」──を目的としています。

デジタコと動態管理システムは、そもそも目的からして異なるのです。


特定事業者の選任や、「CLO」(Chief Logistics Officer)の設置義務、1運行2時間ルールの制定など、政府が推し進める物流革新政策の目的は、少子高齢化によって将来の労働人口の減少が不可避な日本社会においても、持続可能な物流を実現するためのものです。

そして今、この目的を満たすことを目的とした動態管理システムが、続々と登場しているのです。


もし今、「動態管理システム?、デジタコに付いてるけど…」と思う方がいらっしゃるのであれば、ぜひ最新の動態管理システムを調べてみてはいかがでしょうか。


これからの物流改善に向けた新たなヒントが、きっと得られることでしょう。


<著者プロフィール>

坂田 良平  物流ジャーナリスト

Pavism代表。トラックドライバーを経て、IBMグループのWeb制作会社などで勤務。「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、執筆活動や、ITを活用した営業支援などを行っている。ビジネス+IT、Merkmal、プレジデントオンラインなどのWebメディアや、企業のオウンドメディアなどで執筆活動を行う。最近ではTV・ラジオ出演や、セミナー登壇なども積極的に行っている。