サプライチェーン攻撃が急増中 — 物流拠点の“見直すべき”セキュリティポイント
作成日:2025年11月5日
重要インフラを取り巻く情勢は、システム利用の高度化、複雑化、サイバー空間の脅威の急速な高まりを受け、適確かつスピーディーな対応が求められています。これを受け、令和6年に国土交通省は「物流分野(倉庫)における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン」を公表し、物流分野のセキュリティ強化を求めています。
物流事業者として国民の生活及び社会経済活動の基盤を支えていくためにサイバーセキュリティ対策に取り組むことが重要であり、サプライチェーン全体でセキュリティを向上させる方策を講じる必要があります。
本記事では、物流業界での近年のサイバー攻撃のトレンドや、物流業界に内在するリスクとその解決方法について解説します。
■物流業界を取り巻くサイバー攻撃の特徴
・サプライチェーン攻撃の増加
・サプライチェーン企業が侵入経路となる事案の増加
・物流が止まることによる被害の甚大化
■物流拠点に内在するリスク
■物流業界のセキュリティ強化案
・OA領域とマテハン領域の境界の分離
・リモート環境の一元管理
・OA/マテハンネットワーク領域の監視
■都築電気の物流業界向けセキュリティ対策パッケージ
物流業界を取り巻くサイバー攻撃の特徴
サプライチェーン攻撃の増加
近年、「サプライチェーン攻撃」がサイバー攻撃のトレンドとなっています。
「サプライチェーン攻撃」とは、攻撃対象の企業(委託元)を直接狙うのではなく、委託先などの取引先を経由して情報を窃取したり、委託先から納品された製品・サービスを悪用したりする攻撃手法です。
IPAが発表する「情報セキュリティ10大脅威」によると、数年にわたり「ランサムウェアによる被害」が1位となっていますが、近年では「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」が上位にランクインしています。

参考:情報セキュリティ10大脅威 2025 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構をもとに、当社にて情報を加工
サプライチェーンが侵入経路となる事案の増加
サプライチェーンが侵入経路となる事案は年々増加しています。例えば、近年報告された事例では、某大手自動車関連事業者の拠点間のリモート接続機器(VPN)等の脆弱性を突かれて侵入され、その後社内サーバーにランサムウェアが感染して工場の稼働が停止したケースが報告されています。
また別の事例では、国内港のコンテナターミナルの統合システムが暗号化されて停止し、数日間の搬入・搬出遅延が発生したため、大量のコンテナやサプライチェーンに大規模な影響が生じたと報告されています。
物流が止まることによる被害の甚大化
サプライチェーン攻撃は、特に物流拠点に対して甚大な影響を及ぼします。物流拠点の業務が停止すると、「生活・医療・経済・公共安全」など多領域に即時かつ連鎖的な影響が広がるため、重要インフラである物流拠点の停止は社会に与える影響が大きくなります。結果として、情報漏えい・業務停止・莫大な損害賠償や信用失墜につながり、関係者から責任を追及される可能性があります。
被害を防ぐためにも、サプライチェーン攻撃への対策を早急に講じることが非常に重要です。
物流拠点に内在するリスク
物流拠点のお客様からよく伺う話を基に、サプライチェーン攻撃に対して脆弱になり得るリスクを、当社が考えるリスクと対応策を整理しました。
なお、物流特有システムを、以降ではマテハンシステムと呼びます。
・管理の手間を減らすために端末を同一セグメントで運用している
拠点内でネットワークセグメントが適切に分離されていない場合、OA端末とマテハン端末が同一セグメントに存在すると、攻撃が一箇所で発生しただけで被害が拡大しやすくなります。
・ベンダーが持ち込んだ“非管理”リモート接続機器が混在している
マテハン導入ベンダーごとにリモートメンテナンス機器(VPN等)が設置され、非認知・未管理の装置が混在することが多く、ベンダー側のセキュリティ対策が十分でない場合もあります。
・古いマテハン設備がセキュリティ上の脆弱点となっている
マテハン設備は古い稼働資産が多く、エンドポイントセキュリティを導入したくても機器互換性や停止時間の制約で後回しにされていることがあります。
これらすべてのリスクを同時に解消することは現実的ではないため、影響度と実現可能性を踏まえて優先順位を設定し、段階的に対策を実行することを都築電気は推奨します。
物流拠点のセキュリティ強化案
当社が考える物流拠点向けのセキュリティベストプラクティスは以下のとおりです。現場で実行しやすい順序と効果を意識して設計しています。
① OA領域とマテハン領域の境界の分離
② リモート環境の一元管理
③ ネットワーク全体/末端のマテハンの監視
①OA領域とマテハン領域の境界の分離
まず、OA(事務系)領域とマテハン領域の境界にファイアウォールを設置することを推奨します。境界でトラフィックを制御することで、万一どちらか一方が侵害されても攻撃が他側へ波及するのを抑えられます。導入したファイアウォールは、ファームウェアを定期的に更新し、境界が常に有効に機能する状態を維持します。
②リモート環境の一元管理
リモートアクセス由来の脅威を抑えるために、マテハン領域内にリモートアクセス専用のファイアウォールを設けます。アクセスはゲートウェイ経由で一元管理し、MFAなどを組み合わせて運用することで、遠隔保守の安全性を高めます。さらに、リモートアクセスとインターネットアクセスのファイアウォールを統合することで、外部からの検知・防御を集中管理しやすくします。
③OA/マテハンネットワーク領域の監視
当社は、マテハン環境では端末側にEDRを導入できないケースが想定されるため、NDRによるネットワーク監視を重要な補完策と考えます。NDRはパケットやフロー解析を通じて通信異常や未知脅威を検出し、端末の存在や振る舞いを可視化することで資産管理の穴を埋めます。加えて、EDRを導入可能な端末には優先的に展開し、ログ連携やアラートの相関分析で検知精度を向上させます。
都築電気の物流業界向けセキュリティ対策パッケージ
都築電気は上記のベストプラクティスに沿い、物流業界でよくある課題に対応するセキュリティ対策パッケージを提供しています。 先に述べた「OA/マテハンの境界分離」「リモート環境の一元管理」「NDR/EDRによる監視」などの対策案を、そのまま実現できるソリューション群としてパッケージ化しています。パッケージ以外にも、お客様の要望や環境に応じた個別の対策製品をご提案できます。
下記の資料では、サイバーセキュリティインシデントの事例や物流ガイドライン、都築電気の対策パッケージについて解説しています。ご関心のある方はぜひご覧ください。
